パティシエやシェフのコック帽が上に長い理由とは?

パティシエやシェフのコック帽が上に長い理由とは?

シェフイメージ

イタリアンシェフから中華の料理人まで、真っ白なシェフ服に高さのあるコック帽ってカッコ良いですよね。

国にもよりますが、日本では「 コック帽が高いほどキャリアを積んだシェフ 」とされており、その地位を表すものでもあります。

たとえば帝国ホテルでは見習いシェフは18cmのもの、料理長以上になると35cmと決まっています。

ただ、これはホテルにもよりますし、そもそもキャリアで長さを決めない国や地域も多いそう。

コック帽が上に長い理由

コック帽をかぶった女性シェフ

なぜコック帽は上に長い形をしているのでしょう?

コック帽に高さがあるのはただシェフのキャリアを表すためだけではなく、実用性のためでもあります。

もともとコック帽子は髪の毛が落ちたり汗が垂れてしまうこと防ぐため、つまり衛生的な面からかぶっているもの。

しかし、常に大鍋やオーブンに火を入れていて暑い厨房のなかで普通の帽子をかぶっていると帽子の中が蒸れてしまうのです。

却って汗をため込んでしまい、垂れる原因にもなってしまいます。

そこで、帽子の中が蒸れにくいように、上に長く空洞スペースがあるコック帽をかぶるのです。

帽子に髪や頭が直接ふれず、汗が空洞のなかの空気に蒸散していくため蒸れにくい構造になっています。

蒸れてきたら一度外してかぶり直せば中の空気が入れ替わり、また上に長い空洞分、汗による湿度をため込めるスペースができるわけです。

くしゃっとつぶれたタイプのコック帽

上に長いのではなくくしゃっとつぶれた形のコック帽。

コック帽には上にピンと長く伸びるタイプだけでなくまるくくしゃっとつぶれた形をしたタイプもあります。

これも中に空気が入るスペースができるようあえてくしゃっとした部分を作っているものです。

起源はシェフの帝王 アントナン・カレーム

フランス料理界でシェフの帝王とまで称されたアントナン・カレーム

いまのように高さのあるコック帽をかぶりはじめた起源には諸説ありますが、もっとも有力とされているのが伝説のシェフ・パティシエであるアントン・カレームです。

アントナン・カレームは18世紀から19世紀にかけて活躍したシェフで、当時アントナン・カレームはフランス料理の発展に大きく貢献し、当時は「 国王のシェフかつシェフの帝王 」と称されていました。

あるとき、アントナン・カレームがシルクハットの山高帽子を気に入り、かぶり始めたのが現代の上に長いコック帽の起源

「 シェフの帝王 」とまで称されるアントナン・カレームが上に長いコック帽をかぶったものですから、ほかのシェフたちもこぞって真似しはじめたのです。

流行ってみればビックリ、頭が蒸れにくく快適で予想以上にだったので、フランス料理に限らずあらゆる料理のシェフやパティシエたちに愛用されるようになりました。

オーギュスト・エスコフィエが背の低さをごまかそうとした説も

オーギュスト・エスコフィエが低い身長を気にして上に高さのあるコック帽をかぶりはじめた?

高さのあるコック帽の起源には、アントン・カレームが広めた以外にもう一つ説があります。

18世紀から19世紀ころにシェフとして活躍し、アントナン・カレームの築いたフランス料理の基礎をさらに昇華させたオーギュスト・エスコフィエが広めた説です。

(オーギュスト・エスコフィエは優れた料理人に授与される賞である「 ディシプル・オーギュスト・エスコフィエ 」にも名前が入っている、フランス料理界におけるもう一人の巨匠)

オーギュスト・エスコフィエは身長が157センチと低かったため、自身の存在感を出すために高さのあるコック帽をかぶり始めたのが起源とされています。

低いといっても1ハイド以上あるし、当時の平均身長で考えればそこまでか?とも思いますが……

まとめ:シェフがかぶるコック帽が上に長い理由とは?

  • コック帽は熱い厨房でも帽子のなか蒸れにくいようスペースを作るために上に長い。
  • 起源については諸説あるが、国王のシェフかつシェフの帝王とまで言われたフランス料理シェフ アントナン・カレームとの説が有力。
  • もうひとつ、同じくフランス料理シェフ オーギュスト・エスコフィエが自身の低い身長でも存在感を表すためにかぶったのが起源との説も。

現在では西洋料理のみならず中華料理のコックも利用しており、世界的なスタンダードになった上に長いコック帽。

上に長いコック帽については諸説ありますが、おおむねフランス料理にたどり着くようですね。

ただの見た目だけかと思っていましたが、ちゃんと実用性があってびっくり。

最近では汗の湿気を吸うほかにも紙でできた帽子をかぶるなど、シェフがかぶる帽子にはいろいろな工夫がなされているようです。

ただの帽子ひとつにもいろいろな工夫の歴史があるものだと感心するばかりです。

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