ソプラノリコーダーのジャーマン式とバロック式の違い

ソプラノリコーダーのジャーマン式とバロック式の違い

日本では義務教育課程の小学校、中学校の音楽の授業でソプラノ、アルトリコーダーを習います。みなさんもほとんどの方はリコーダーをやっているはず。
(ある程度お歳を召した方はハーモニカかも)

当時はぷぴょ~と鳴らさずにキレイな音を出そうと必死であまり意識していない方が多かったかと思いますが、リコーダーにはジャーマン式バロック式があります。

小学校でのソプラノリコーダーはジャーマン式、アルトリコーダーはバロック式を使っていたはず。

ではジャーマン式とバロック式にはどんな違いがあるのでしょうか?

ジャーマン式 / バロック式の区別があるのはソプラノリコーダーだけ

ジャーマン式・バロック式リコーダーイメージ

ジャーマン式があるのはソプラノリコーダーだけ。

一般的に市販されているリコーダーで、ジャーマン式があるのはソプラノリコーダーだけで、アルトリコーダーを含めほかの音域のリコーダーはバロック式のみでジャーマン式はありません。

これはアルトリコーダーに限ったことではなく、超高音のソプラニーノからリコーダーのお化けみたいなコントラバスリコーダーまで全部バロック式のみ。
ジャーマン式が存在するソプラノリコーダーが特殊なのです。

運指がわかりやすいジャーマン式と音色重視のバロック式

ジャーマン式とバロック式リコーダーの違い

ジャーマン式とバロック式の違いはファの押さえ方。

ジャーマン式とバロック式の最大の違いはファの押さえ方にあります。そしてこれ以外はほぼ同じと言ってもいいでしょう。

さぁ、思い出してみましょう。小学校で習ったジャーマン式ソプラノリコーダーは全てを押さえた状態から指をひとつずつ離していくごとにドレミファソラシの順で音が鳴ります。

バロック式でも同じ運指でドレミまでは行けるのですが、そのあとのファが全然違うややこしい押さえ方になります。

ジャーマン式のメリット

ジャーマン式の最大のメリットは運指のわかりやすさ。先述の通り指を離していくだけでドレミファソラシと音が上がっていくので簡単だし憶えやすいメリットがあります。

反面運指的に♯や♭の半音が出しにくいデメリットがあります。

が、小学校で習うのは基本的にハ長調などドレミファソラシのみの曲のみで、♯や♭が出る曲は演奏しないため特に問題ありません。

これらの特徴から、基本的に小学校ではジャーマン式のリコーダーを用意するよう指定されます。小学校用のリコーダーをお探しの方はジャーマン式のリコーダーをご用意ください。

このあたりについて詳しくは下記のページでも詳しく解説しています。

バロック式のメリット

バロック式のメリットは♯や♭が出しやすい点。

小学校で演奏する曲では半音の音は使いませんが、普通に演奏する曲で半音が一切出ないことは珍しいくらい。なので♯や♭の入った音階が吹きやすい点はメリットになります。

もう一つのメリットは、ソプラノリコーダーでバロック式の運指で慣れておけば、ほかの音域のリコーダーに持ち替えたときに比較的早く順応することができる点。

先述の通りジャーマン式があるのはソプラノリコーダーだけで、アルトやバスなどほか音域のリコーダーは全てバロック式のみ。運指が簡単なジャーマン式で慣れてしまうと、持ち替えたときに慣れるまで大変です。

また、構造上バロック式の方がジャーマン式よりも若干音質・音の響きがいいとされています。

小学校で使うならジャーマン式 / 演奏目的ならバロック式

こういった特徴から、小学校で使うならジャーマン式リコーダーを使うのがベター。小学校からもソプラノリコーダーを買うときはジャーマン式のものを用意するよう指定されるかと思います。

ドレミファソラシの運指がわかりやすいため小学生が管楽器の入門として使うのにちょうどいいのです。

ジャーマン式ソプラノリコーダーの代表例では、YAMAHA YRS-301IIIと老舗トヤマ楽器さんのAULOS(アウロス) 104A(G)

逆に言えば、楽器としてリコーダーを演奏して楽しみたいのであればバロック式を選んだ方がいいでしょう。

♯や♭は普通にいろいろな曲でよく出てきますし、アルトやバスなほか音域のリコーダーに持ち替える事もあるでしょうから。

バロック式のソプラノリコーダーの代表例ではYAMAHA YRS-302BIIIAULOS 105A (E)あたり。

ジャーマン式・バロック式の由来と歴史

もともとリコーダーはルネサンス期からバロック期にかけて広く使われた由緒正しい楽器です。

その後、楽器と製造技術の進化にともないしシンプルなリコーダーは段々と廃れていきましたが、20世紀初頭にアーノルド・ドルメッチというイギリス人がいろいろな古楽器を復元し、リコーダーもこのときに復元されました。

しかし製作にコストがかかるため、広く普及するには至りませんでした。

そんなあるとき、アーノルド・ドルメッチはとある街の音楽祭でドイツ人のペーター・ハルランと出会います。このペーター・ハルランこそがジャーマン式リコーダーの発案者。

ペーター・ハルランはもっとリコーダーを広く普及させたいとアーノルド・ドルメッチに製造方法を教えてもらいます。そしてドイツに帰って工夫し、木材に安価なメイプル(カエデの木)を採用するなど、低コストでの製造方法を確立。

この際、普及させるための工夫のひとつとして本来のリコーダーよりも運指が簡単なリコーダーを作り出します。これがドイツを中心に大きく広がりました。ドイツ人のペーター・ハルランが造り、ドイツを中心に広まったためジャーマン式と名づけられました。

これに対し、バロック期に使われた伝統的な運指のリコーダーはバロック式と呼ばれるようになります。

実際、現代においても日本でも小学校の音楽教育でも使われるなど、ペーター・ハルランが生み出したジャーマン式ソプラノリコーダーはリコーダーそのものの普及に大きく寄与しました。しかし、どういうわけかペーター・ハルラン自身はその後ジャーマン式リコーダーを生み出しことを後悔したとのことです。

まとめ:ソプラノリコーダーのジャーマン式とバロック式の違い

  • ジャーマン式は基本的にソプラノリコーダーしかのみで、例えばジャーマン式のアルトリコーダーは市販されていない。
  • ジャーマン式は運指がわかりやすく簡単なため、小学校での音楽教育用として用いられる。
  • バロック式は♭や♯が入った音階を吹きやすい、などの特徴がある。演奏目的であればバロック式が無難。

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